Tin Pan

アルバム AAC 128/320kbps

細野晴臣、鈴木茂、林立夫。ここに松任谷正隆を加えた4人が、周囲のミュージシャンたちを巻き込みながら、ティン・パン・アレーという名の音楽集団として、70年代の日本のポップ・ミュージック・シーンでどれほど大きな役割を果たしたか、それはもういくら語っても語り尽くせるものではないだろう。その彼らが、三人が集まってTin Panとしてアルバムを作るという話を聞いて以来、いろんなことを想像してきたが、完成したものは、予想通りのところと心地よい裏切りと、いずれをもちゃんと備えたものだった。76年のセッションのテープに演奏を加えたものから、まったく新たに書き下ろしたものまで、どちらかといえば、ジャム・セッション的な、偶発的なものを軸に発展していったような内容だ。むろん、技術と知恵と発想と経験と、どれをとっても達者な人たちだけあって、この窓から見える音楽風景は、ボーダーレスな感覚の強い、とても想像力豊かな、気品あふれるものばかり。それらの音の断片の中から、薄っぺらい世界とは違った、もうひとつの、確実に存在する世界で音楽を奏でてきた男たちの、チャーミングな息遣いを拾うこともできるだろうし、顰めっ面しながら、音のひとつひとつの謎を解いていく楽しみも、むろん、悪くない。あくまでも三人が軸だが、大貫妙子から忌野清志郎、大瀧詠一、中村一義まで、目を見張るようなゲスト陣が参加、それも、約束事を廃して自由に出入りしている感じがいい。ゲスト陣ばかりか、ティン・パン・アレーという三人の過去までが出入りしたり、漠然とだが三人の未来までもが出入りしたりもしている。考えてみれば、それこそが、かつての彼らの精神ではなかったか。音楽という夢が散らばっている大人の楽園への扉のような、アルバムかもしれないなあ、と思いながら、その居心地を楽しませてもらっている。でも、あまり騒がれると、この中の音をひとつくらい奪って、ちょっと抜け出したくなる。（CDジャーナル）

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